【レビュー】KANI 円形NDフィルター ND1000とステップアップリングの使用感

 近年は風景写真愛好家の間で注目されております角型フィルター。角型フィルターでは特に、NISI社とKANI社の角形フィルターを使用する方が増えてきております。ただ角形フィルターはどうしても装備が大掛かりになってしまいますので、旅行などで少しでも荷物を減らしたい筆者としましては、角形フィルターではなく円形フィルターを愛用しております。今回は、長時間露光用にKANI社のND1000フィルター(円形)とステップアップリングを購入してみましたので、使用感などのレビューをしてゆきたいと思います。

 

KANIの円形フィルターを選んだ理由

SIGMA DP2 iso100 F8 1/100sec 24.2mm

 今回は、KANI社の円形NDフィルターを購入しましたが、風景撮影が趣味の筆者が、今大注目の角形フィルターではなくて、敢えて円形フィルターを選択しました理由、それは旅行の際の荷物を少しでも減らしたいからに他なりません。

 角形フィルターにつきましては、GNDフィルターなど減光率の異なるフィルターを使用しますと、明暗差の大きいシチュエーションでは大活躍することは間違いないところかと思われますが、ホルダーが大掛かりな印象は拭えず、荷物が増えてしまいますことと、観光地で大掛かりな装備を披露する勇気もないことに依ります。

 幸い広角レンズにつきましても、フィルターを付けられないいわゆる出目金レンズは持っておりませんので、円形フィルターを愛用させていただいております。

 円形フィルターにつきましては、自分の持っておりますレンズの中で最大径のものに合わせてフィルターを購入し、それよりもフィルター径の小さいレンズを使用します際には、ステップアップリングを使用して、フィルターの枚数が必要以上に増えることを防止しております。

 ただ、ステップアップリングを使用して、レンズ径より大きなフィルターを使用いたしますと、レンズフードは使用できなくなりますので、日の差し込む角度によりましては、帽子や日傘で害となる光をカットします場合も発生いたします。

 今回は、NISI社とKANI社の円形フィルターで悩みましたが、若干お財布に優しかった事と、反射率の数値が低くなっていた事からKANI社のNDフィルターの購入に至りました。

SIGMA sdQuattroH iso100 F5.6 1/500sec 24mm

 

KANI ステップアップリング(72mm→82mm)の使用感

ステップアップリングの造り・質感

SIGMA sdQuattroH iso100 F5.6 1/1600sec 50mm

 NDフィルターのレビューの前に、先ずはステップアップリングのレビューを。

 今回購入のステップアップリングは、KANI社の72mmから82mmに変換するステップアップリングとなります。

 たかがステップアップリングと言ってしまいますとそれまでですが、折角の機会ですので、今まで購入したことのないメーカーのステップアップリングを探してみました。

 KANI社のステップアップリングにつきましては、本来は、100mm角形フィルター用ホルダーのアダプターリングとしまして販売されているものとなりますが、単体で使用いたしますと汎用のステップアップリングとしまして使用できるものとなります。

 ホルダー用のアダプターリングのためか、ステップアップリングとしましては、しっかりとした造りとなっております。

SIGMA sdQuattroH iso100 F5.6 1/800sec 50mm

 

ステップアップリングを装着した感想

SIGMA DP2 iso100 F8 1/200sec 24.2mm

 KANI社のステップアップリングは、剛性感があり、薄っぺらい一般のステップアップリングとは異なる質感となっており、加工精度も高そうで、ねじ込みもスムーズとなっております。

 非常に満足度の高いステップアップリングで、安心して使用する事ができますが、若干気になる点もございますので、レビューしたいと思います。

 下の写真をご覧いただきますとお解りになっていただけますかと思われますが、若干、外径が通常の大きさよりも大きくなっております。

 本来、100mmホルダー用との事でそちらに合わせた外径なのかと思われますが、通常の82mmのフィルターより若干外径が大きくなっておりますので、外枠にローレット加工(溝加工)のないフィルターの場合ですと、外しにくくなる場合が考えられます。

 また、PLフィルターなど可動するフィルターにつきましては、更に外しにくくなることが考えられますので、PLフィルターを使用する際は注意が必要かと思われます。

SIGMA DP2 iso100 F8 1/80sec 24.2mm

 

KANI 円形フィルター ND1000(82mm)の使用感と実写比較

円形NDフィルターの造り・質感

SIGMA sdQuattroH iso100 F5.6 1/640sec 26mm

 KANI製ND1000 フィルター(82mm)は、高い平坦精度を特徴とするドイツ製SCHOTT B270ガラスを使用し、低反射率を確保、また真空蒸着技術により色味を変えずにND効果を実現しているものと言われております。

 先ず、手にした第一印象は、「軽い」。

 実際のところの数値的な重さは確認しておりませんが、フィルター枠にはジュラルミンが採用されており、軽量化と高い硬度が確保されております。

 また撥水・撥油、防塵などの対応のコーティングも施されており、取扱いに神経質にならなくても良いのは、非常に嬉しい部分かと思われます。

 同様のコーティングや低反射率など考慮しますと、国産メーカーよりもコストパフォーマンスは高く感じられます。

SIGMA sdQuattroH iso100 F5.6 1/500sec 40mm

 

他メーカーNDフィルターと実写比較

色合い

 さて、随分と前置きが長くなってしまいましたが、肝心の写りはどうなのでしょうか。

 実際に使用して撮影しましたものを、他メーカーのNDフィルターとも比較してゆきたいと思います。

 今回、比較のために使用しましたフィルターは以下のものとなります。

 ①マルミ光機製 EXUS ND4(82mm)

 ②kenko製 ZX ND16(82mm)

 ③KANI製 HT PRO+MC ND1000(82mm)

 素人比較となりますが、なるべく同じ条件で撮影、RAW現像しております。

 撮影機材は、SIGMAのミラーレスsdQuattroH、レンズは同社の18-50mm F2.8 EX DCとなります。

 先ずは、フィルターなしの写真になります。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/200sec 50mm フィルター無し

 次にマルミ製のND4を付けて撮影したものになります。フィルターなしとほとんど変わりません。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/50sec 50mm ND4フィルター使用

 kenko製ND16も使用してみましたが、スローシャッターになった分、若干色乗りが良いかとも思われますが、色味はフィルター無しとほぼ変わらないと言っても良いと思われます。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/13sec 50mm ND16フィルター使用

 今度は、KANI製のND1000を付けて撮影してみました。

 先の日本製のNDフィルターとは印象が大きく異なる写真となりました。

 撮影時の露出設定は変更しておりませんが、全体的に暗くなってしまっております。これが露出の安定しないFoveonセンサー特有の不安定な写りとなってしまったのか、フィルターに起因するものなのかは定かではありませんが、フィルターなしの時とは写り方の異なる印象となっております。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 3sec 50mm ND1000フィルター使用

 露出が暗くなってしまいましたので、SIGMAのRAW現像ソフトSIGMA Photo Proで露出を+1EV調整してみました。

 写真全体の明るさにつきましては、フィルターなし、先の日本製フィルター使用の撮影時と同等になったかと思われますが、全体的に色が青っぽい、どこかノスタルジックな印象の写真になっております。

 今回、たまたまこういう結果になってしまったのか、こういう色合いのフィルターなのかは定かではありまでんが、色味につきましては、少々疑問の残る結果となってしまいました。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 3sec 50mm ND1000フィルター使用 +1EV

 因みに、ND1000フィルターを購入しました大きな理由は、長時間露光の撮影を行いたかったためでしたので、120秒露光でどうなるのかも、試してみました。

 kenko製ND16にKANI製ND1000を重ね付けして120秒露光で撮影、露出が明るくなりすぎましたので、RAW現像ソフト上で-0.3EVの露出調整を行いました。

 フィルター2枚重ねで撮影しておりますが、予想よりも悪くないかな、という第一印象ではありますが、色味につきましては、KANI製フィルターの色味の影響が大きい印象の写真となりました。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 120sec 50mm ND16+ND1000フィルター使用

 

解像度

 次に解像感についてとなりますが、サイトにアップしております写真につきましては、圧縮した画像となりますので、画質の劣化があります事を先にお断りしておきます。

 先ずは、フィルター無し。

 ピントは背景の富士山に合わせておりますが、ほぼ無限遠です。古いレンズで最新のレンズのようなキレキレの解像感は望むべくもありませんが、比較してみるのに良さそうな鉄塔がありますので、その部分をトリミングしてみました。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/200sec 50mmをトリミング フィルター無し

 次にマルミ製ND4フィルター使用で撮影したものとなります。

 若干ではありますが、解像感は落ちているのではないかという気がします。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/50sec 50mmをトリミング ND4フィルター使用

 今度は、kenko製ND16フィルターを使用して撮影しましたものです。

 さすがは2枚重ねをしても解像度が落ちないと言われているだけのことはあるかと思われます結果で、解像感はフィルター無しでの撮影と変化なしと言っても良いのではないでしょうか。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 1/13sec 50mmをトリミング ND16フィルター使用

 KANI製ND1000フィルターの解像感につきましては、正直それほど期待をしておりませんでしたが、大きく期待を裏切られる結果となってしまいました。

 解像感に関しましては、kenko製フィルターと同等かそれ以上のものであると感じられます。

 色味につきましては、違和感が残りますが、解像感に関しましては、今回使用しました3種類のフィルターの中では一番良いのではないでしょうか。

 数値的にも、0.3%以下の低反射率を謳っております事は、偽りのないところなのかと感じられます。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 3sec 50mmをトリミング ND1000フィルター使用

 最後に、kenko製ND16フィルターとKANI製ND1000フィルターの2枚重ねで撮影した場合の解像感のチェックとなります。

 結果としましては、若干解像感は悪くなっておりますが、決して酷いレベルのものではなく、ブログ投稿などでは問題のないレベルにも感じられる結果となりました。

SIGMA sdQuattroH iso100 F11 120sec 50mmをトリミング ND16+ND1000フィルター使用

 

参考情報

 今回、新たに購入しましたKANI製ステップアップリングとND1000フィルターの試し撮りレビューとなりましたが、いかがでしたでしょうか。

 今回のレビューにつきましては、作為的な部分は極力排し、できる限り同条件で比較したものとなります。

 またあくまでも個人的な感想のレビューとなりますので、ご理解の程お願い申し上げます。

 まだまだコロナウイルス感染拡大状況は予断の許さぬ状況が続いておりますが、密を避け、人との距離を保ちながら、周りを意識しながら、撮影を楽しんでいただきたいところかと思われます。

2021.01.01記

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